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「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶

細胞を創る研究とは、どういうものでしょう。

たとえば、乾燥させた脂質分子に、水をゆっくり加えると、脂質分子が球状の2重膜となった器(うつわ)をつくることができます。その器の内部にDNAやタンパク質を内包させて、転写や翻訳反応、代謝機能を再現したとします。果たして、この器は細胞と呼べるでしょうか? ではさらに、器の周辺に膜タンパク質を発現させ、外界と応答させてはどうでしょう。あるいは、膜タンパク質と内部のタンパク質を連動させ、分裂を起こさせたらいかがでしょう。極めつけに、その器に鞭毛をとりつけ、泳がせたら、、、、

細胞で起きている生命現象をどこまで再現すれば、細胞を創ったことになるのでしょうか。生命のはじまりはいつなのでしょうか。このような問題を探求するのが本研究会の趣旨です。

何十億年も前に、おそらく分子の自己組織的な現象がいくつも組み合わさって最初の生命、つまり最初の細胞ができたはずです。その瞬間を観てみたいというのは、多くの科学者の夢でもあります。工学者は、生物の魅力的なシステムにあこがれ、これを人工的に創り出したいと思い、生物学者は、再構成することで解る生命の真理を導き出したいと意欲を燃やしています。上のような試行錯誤を繰り返し、形から反応、動きまでを再構築し、どのようにして生命が誕生したか探る研究は、細胞を創る研究の醍醐味でもあり、「生命とは何か」を知る営みでもあります。

一方、そのような研究は、いったい何の役立つのかという疑問も出てきます。また、「創る」行為そのものの是非を問うべきだという声もあります。細胞を創る研究では、科学・技術的なアプローチに加えて、社会との対話も必要不可欠です。科学者が直接一般の方と議論できる場があるのもこの研究分野の特徴です。

本研究会が発足して今年で4年目を迎えます。生物・医学から、物理、化学、材料、工学、人文社会のメンバーらが一堂に会し、毎回、各分野の一流の研究者からの講演を通じて「細胞を創る」研究に関して議論しています。今年で会員は300人を超え、一人前の組織に発展してきました。研究交流だけでなく、研究の重要性を各所へ働きかけ、現在、様々な機関で関連分野のシンポジウムや大型プロジェクトが立ち上がっています。異分野の研究者が「細胞を創る」という共通の舞台で、思考を凝らし、新しい学問の潮流をつくりつつあるのは、大変喜ばしいことです。今後も当研究会の発展にご期待ください。

平成22年9月
細胞を創る研究会 会長 
竹内昌治


竹内昌治
(東京大学生産技術研究所)

過去の「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶

平成21年度会長 上田泰己(理化学研究所)

平成20年度会長 四方哲也(大阪大学)

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