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「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶

私たちが地球上の生命を眺めるとき、いつもその多様性に驚かされます。 多様な生物の基盤である細胞を創ることを目標として、 私たちは何をつくることができるでしょうか。 個々の要素を組み合わせて天然と同じ細胞内のシステムをつくる、 という、伝統的な再構成実験が、生体分子調製手段の進展とともに 再び盛んになっています。 この研究の流れが進み、その時点で知られる限りの 細胞の全ての構成要素を組み合わせて細胞を丸ごと再構成する、 ということが将来の一つの目標であることは間違いありません。 一方、生命の動作原理のある局面に注目してその本質を知るために、 マイクロ加工などの技術の進展も活用して、あえて単純化した システムを理論に基づいて構築する風洞実験にも多くの意義があり、 今世紀に入って多くの進展がありました。 そして、多くのつくる研究から、私たちは、古典的な遺伝子工学の 枠組みを超えて、天然の生命と大きく異なるシステムや、 遺伝暗号に使用される4種類の塩基や20種類のアミノ酸といった 天然の普遍的な基準から離れたシステムを構築することまでもが 可能であることを知ってきました。

このようなつくる研究が進展してきた状況をうけて、 生物の多様性を改めて想像するとき、その対象は私たちが 天然に今観ることができる生物のみでよいのでしょうか? 生物の多様性の基盤は、生物が階層性をもつシステムであり、 システムの構成要素の組み合わせが膨大であることにあります。 例えば、20種類のアミノ酸が200個連なって構成される小さめのタンパク質でも、 その配列の場合の数は20の200乗、つまり10の260乗となり、 宇宙に存在する素粒子の数よりも大きくなります。生命の階層を一つ登り、 タンパク質が複数種類組み合わさった反応システムを想定しても、 私たちが地球上で観ることができる生命のかたちは、 「ありえた」生命のかたちのごく一部であることが容易に想定できます。 実際、アミノ酸の数については、20種類という数を人工的に逸脱させた 細胞が創られた後、天然にも同様の細胞が見出されることとなりました。 火星に次々と探査機を送り込み、また、太陽系外の惑星についての 知見が蓄積されてきた今、改めて生命の本質を広い視点から 考えることができる時代が到来したといえるでしょう。

もちろん、天然と同じ細胞をつくる際にも、 また、天然と異なる「細胞」を創る際にも、倫理的問題、 技術的リスクがあることも間違いありません。 そのリスクの大きさがどの程度であるのか、 それに対して得られるものが人類社会にとってどれだけあるのか、 ということを考え話し合いながら研究を進めていくことが、 本研究会の発足時よりもますます重要になってきています。 その意味で、生物・医学から、物理、化学、材料、工学、人文社会の メンバーが一同に介して議論をすることができる本研究会の 特徴がますます活かされる時代がやってきているのだと思います。

さて、私の挨拶は歴代会長のバランスがとれた挨拶よりも あえて偏った檄文となってしまいましたが、本年の年会編成は、 例年通り異分野の研究者が集い、それぞれの視点からの 「生命」についての考察を、多くの参加者との議論を通じて 磨き上げるための場を提供すべく準備を進めています。 また、皆様各自の得意分野を持ち寄った共同研究の相談の場や、 様々な技術や思考の風を受ける機会となることも間違いありません。 年会に例年参加してくださっている皆様も、 いままで参加の機会が無かった皆様も、ぜひお気軽にいらしてください。 新しい驚きを得られること、間違いありません。

平成24年8月
細胞を創る研究会 会長
                木賀大介


木賀大介
(東京工業大学
大学院総合理工学研究科)

過去の「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶

平成23年度会長 野地博行 (東京大学)

平成22年度会長 竹内昌治 (東京大学)

平成21年度会長 上田泰己(理化学研究所)

平成20年度会長 四方哲也(大阪大学)

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