「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶(R3)
会長挨拶
松浦 友亮
(東京工業大学)
東京工業大学の松浦友亮と申します。「細胞を創る」研究会も第14回を迎えます。実は、私が本研究会に本格的に参加するようになってからそれほど経っておりません。あまり縁が無く距離を取っていたのですが、参加し始めて毎年大いに刺激を得ています。第一線の研究者がオーガナイザーになりセッションを組むというスタイルでの講演会は抜群に面白いです。社会科学のセッションがあるという点においても大変ユニークです。毎年、全体をオーガナイズする大会長の見識の深さに感銘を受ける次第です。まだ参加されたことがない方は是非とも一度、覗いてみてください。
「細胞を創る」研究会は、14回を迎えて既に多くの方に認知される会に成長しました。専門の異なる方からも「細胞を創る」研究会のことを聞かれることが多く、これを実感する今日この頃です。本研究会は、毎年、新たな参加者、特に若い研究者が多く参加している点で非常に活気・熱気があります。常に新しい技術や知識を必要とする分野にとって本研究会は、重要な役割を果たしていると思います。近年ボトムアップに「細胞を創る」研究が世界的にも盛んに行われ、様々な機能・性質を持つ人工細胞の構築が報告されています。原核・真核細胞の全ゲノム合成、これによる大規模な代謝改変などは引き続き盛んに研究される分野と考えられます。一方で、生物の最も重要な性質である恒常性をボトムアップに創り出すのはまだ困難です。非平衡であること、自立的に定常状態を保つこと(恒常性)が、生きている細胞の大きな特徴の一つです。この性質が、どのように産まれたのか、どのようにデザインできるかは現在の研究の延長だけでは打破できない大きな挑戦ではないかと考えています。
「細胞を創る」研究は、大きく分けて(1)創ることで生命システムを理解することを目指すもの、(2)そして役立つ分子・分子システム(細胞を含む)を創るもの、(3)創ることの意義・危険性を考えることを目的としています。これらを通して、何より研究を楽しむことが重要です。本研究会がこの点に貢献できていれば幸いです。
昨年度の研究会は、コロナ禍のためオンラインでの開催となりました。本年度の研究会もオンラインでの開催を予定しています。既に多くの方が良くも悪くもオンライン慣れし、その良さを実感されている方も多いと思います。世界中のどこからでも参加できる利便性は、これまでにないものです。一方で、旧知の人同士の交流は簡単になりましたが、新たな出会いの場が著しく少なくなっています。つまり、立ち話がなくなってしまいました。今年度の研究会では、立ち話できる工夫ができたらと考えています。
令和3年4月
「細胞を創る」研究会 会長
松浦 友亮