「細胞を創る」研究会

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「細胞を創る」研究会会長からのご挨拶(R4)

会長挨拶

Yutetsu Kuruma
車 兪澈
(海洋研究開発機構)

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の車兪澈です。「細胞を創る」研究会は今年で15年目を迎え、ますます大きく活発な研究会に成長しています。COVID-19によるパンデミックの影響で、昨年一昨年はオンラインでの開催になりました。研究会の新しい側面を見出すことができた反面、やはり対面での議論や研究の近況を語り合う場が恋しくなってきている方も多いと思います。これを書いている今も、「本当にオンサイトで開催できるのか、また次の感染波が来てしまうのではないか」と気が気ではありません。ぜひまた皆さんとお会いして、溜めに溜め込んだ研究成果を会場で拝聴できればと願っています。

 「細胞を創る」研究会は、細胞の生命現象を分子と遺伝子から再構築し理解しようとする研究者や学生、社会人文学系の人々が集まってできています。「合成生物学」という言葉が広まり始めた2000年初頭では、細胞を一から組み立てるこのような研究は、実はそれほどメジャーではありませんでした。しかし、ここ5年くらい前から世界的にも大きな潮流になっているように感じます。アメリカ、ヨーロッパ、イギリスなどでは”Build-a-Cell”に代表されるコンソーシアム型の研究グループも組織され活発化してきています。また、細胞機能の再構築や高度化をテーマとしたカンファレンスの数も年々増えています。研究費の方も、JST戦略的創造研究推進事業「ゲノム合成」やJSPS科研費学術変革領域研究A「分子サイバネティクス」「超越分子システム」、内閣府ImPACT(野地PM)など、国の大型予算もつくようになってきて、本分野の若手研究者にも多くのチャンスが回ってきていると思います。そんな中、15回も研究会を重ねている我々は内心『やっと世界が追いついた』と自負しているのではないでしょうか。私はしています。早くから「細胞を創る」研究に着手してきた我々日本の研究者が、さらに尖った自由な研究を突き進むことで多くの可能性を広げていき、この分野をもっと面白くさせる。そのための研究交流と議論の場として本会が貢献できればと願っています。さらに今回は例年にはない、JAMSTECセッションも予定しています。最先端の地球海洋科学の研究者がみなさんの知的好奇心を刺激します。

 本当に研究室で生き物を創ったら我々の生命の価値観はどう変わるのだろう?あと何を再構築すれば細胞が作れるのか?考えるべきバイオセキュリティーは?人工細胞は世界を変えるテクノロジーになるのか?このようなQuestionは年々急速にリアルに近づいてきていて、今後我々が直面する近未来を考えると興奮してきます。どうかみなさんもこの興奮を「細胞を創る」研究会で共有していただき、最新の研究成果をEnjoyしていただければ幸いです。

 今年の「細胞を創る」研究会15.0は、10月17日(月)、18日(火)に東京工業大学蔵前会館で開催します。さらにスピンオフ企画として、有志者を対象としたJAMSTEC横須賀本部ツアーを予定しています。依然としてコロナ禍が続く昨今どこまでできるかわかりませんが、できればオンサイトでみなさんとお会いできるのを楽しみにしています。ぜひ例年以上に皆様の積極的なご参加・ご協力をよろしくお願いいたします。

令和4年5月
「細胞を創る」研究会 会長
車 兪澈