「細胞を創る」研究会

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「細胞を創る」研究会会長のご挨拶

 18年目となる2025年の「細胞を創る」研究会18.0 会長に選任されました末次です。私自身は「創る会」に参加して10年ほどになります。当時、分子生物学ゴリゴリの研究をしていましたが、創る会に触れて、「細胞を創ってみたい」というロマンに憑かれた研究者の一人となりました。今でこそボトムアップ的に細胞あるいは細胞的な振る舞いを創り出そうとする分野は世界的な潮流となっていますが、いち早くその重要性に目をつけ設立された研究会です。特徴として、学際性・分野横断性が挙げられます。参加者のバックグラウンドは様々で、生命科学にとどまらず化学、物理、工学、数理など異なる分野の研究者がオープンに交流し、新しいアイデアや独創的な技術を持ち寄って、刺激を受けながら「創る」ことを目指します。会に参加するとそのワクワクとした活気を感じてもらえるかと思います。また「細胞を創る」ことの社会的・文化的な意義について批判的な側面を含めて考えていくことも大事な活動の一つです。設立当初から人文社会系の研究者も加わり議論を深めているところです。
 

 なぜ、「細胞を創る」研究に惹きつけられるのでしょうか。これまで分子生物学の進展によって、細胞が生きていく為のパーツと設計図が理解され記述されてきました。ただ、それを突き詰めてもなかなか生命を分った気にならない。そこで、パーツと設計図をもとに細胞を創ってしまおうとなるが、機械をつくるように簡単には創れない。その簡単には創れない境界に物質と隔てる生命の本質があるのかもしれないと期待させられているのかもしれません。実際は創れなくても、その果敢な挑戦と試行錯誤の中で予期せぬ独創的な発見が生まれたり、新しい技術が生まれたりするのではないでしょうか。また、必ずしも現存する細胞そのものを創ろうというものでもありません。創る過程で生み出されたパーツやツールの工学的応用について斬新なアイデアを持ち寄り、既存細胞を凌駕するような機能だったり、細胞の枠を超える分子システムだったりを自由に妄想するのが、むしろ創る研究の醍醐味だったりします。このような純粋な好奇心に突き動かされた研究から将来、医療や環境などの人類が直面する課題にアプローチしうる独創的な技術も生まれるものと信じます。実際に、関連するスタートアップが立ち上がり社会実装に進んでいる事例もいくつかあります。

 なお、今年の大会は9/16-17(予定)に立教大学で開催します。年会費・入会費は無料なので、興味ある方はぜひ入会いただき(Topページ最下のフォームから)、大会にも参加して大いに刺激を受けていただきたいです。また、昨年から「若手の会」も発足しており(https://wakatesaibotsukuru.wordpress.com/)、学生さんや若い研究者は是非そちらもどうぞ